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2001年10月31日 (水)

『おじいちゃんの口笛』

ウルフ・スタルク作  アンナ・へグルンド絵   ほるぷ出版


いったい何から書いたらいいのだろう。
そして、いったい何が書けるだろう・・・。
完全にノックアウトされてしまった。スタルクに!

いつか自分にも老いが訪れることは、誰だって知っている。
けれど、それがどんなものなのかは、
けっして想像して解るものでは無い気がする。

『おじいちゃんと口笛』に登場するおじいちゃん・ニルスさんは、
老人ホームで暮らしている。
ある日、小遣い欲しさに、7歳のウルフとベッラの2人組みが、
そのホームへやってきて、
偶然開いていたドアの向こうにいたニルスさんを
「ぼくのおじいちゃん!」と呼んで、
ニルスさんとベッラの孫ごっこは始る。

なんとも不純な動機。
しかし慰問などというエセ善行より、まだ嘘が無いだけ信用できる。

ニルスさんに小遣いを貰ったりコーヒーをご馳走になったり、
美味しい目に合うだけが目的だった孫ごっこに、
次第に血が通い始めていく。愛情が育ち始めていく。
その象徴が「口笛」。
ベッラは、ニルスさんからお金では買えないものを貰ったのだ。

きっと、ベッラにも日々の中で満たされない何かがあったのだろう。
その欠けた思いを、ニルスさんに埋めてもらいたかったに違いない。
老いるとは、なんと孤独なことだろう。
孤独を感ずることの無い人間など皆無だろうが、
老いての孤独は、それにも増して残酷な気がする。

ニルスさんの誕生パーティの夜、彼の魂からこぼれ出た台詞、
「おまえみたいな孫がほんとうにいたらなぁ。」。
そして、答えるベッラ。
しかし、この2人は知っていたと思う。
もう「本当」かどうかは、大した意味が無いってこと。
要は、誰かが自分を必要として思ってくれるかどうか、だもの。


へグルンドの絵が、
ちょっぴり滑稽で、ちょっぴり哀しい気持ちをよく現している。
3人でシルクのスカーフを使って凧を作る場面の、おじいちゃんの嬉しそうな顔が、なんとも心に残る。

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