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2001年10月15日 (月)

『おおきくなったら…』

ハイデイ・ゴーネル 作  小比賀優子 訳   ほるぷ出版


子供の頃、わたしは早く大人になりたい、と思っていた。
大人になって、
行きたい場所や、やってみたいことがたくさんあった。
いったい何をしたかったのか、
今となっては、あまりに
些細なことだったり、現実味の無いことだったりするが、
当時は真剣そのものだった。

この絵本を開いたら、
なんだかあの頃のことが、鮮やかに甦ってくる。
母の鏡台の前に並んだ化粧品を黙って使ってみたり、
父のコップに残したビールをこっそり飲んでみたり・・・。
そんな秘め事も、
大人になるための儀式だったに違いない。

この絵本の中の子たちも、
車を運転したり、宇宙旅行に行ったり、
家を建てたり、といろんなことを夢見ている。
そして、
その将来を夢見る子ども達には顔が描かれていない。

ハイデイ・ゴーネルは、
顔を描かないイラストレーターだ。
しかし、顔が無くても、
その表情はちゃんと伝わってくる。
顔が無い分、
余計にその内面の深さが現されている気がする。
各々の思いが、顔という外側に出るのではなく、
内へと向うことでより一層純粋さを増す。

夕暮れ時の誰もいない居間や、
夏の午後の陰の濃い住宅街、
ざわざわ皆して大騒ぎしている教室やなんかで、
ほんの一瞬、自分の内側にすべり込む。

その静かな時間に考える「おおきくなったら・・・」
っていう思いは、
未来に向って永遠に続くものだと思っていた、あの頃。


この絵本を初め見たとき、
『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』《村上春樹》の
佐々木マキを思い出した。
彼のあの一連の作品にも顔が無く、
絵の雰囲気がよく似ている。
ただの偶然ではないかもしれないなぁ。

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