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2004年4月10日 (土)

ママは行ってしまった


ママは行ってしまった
  『ママは行ってしまった』  
  クリストフ・ハイン 作  
  ロートラウト・ズザンネ・ベルナー 絵    
  松沢あさか 訳   さ・え・ら書房


可愛い表紙絵に惹かれて図書館で借りてきた3月の新刊でしたが、内容は、家族の死を扱ったとても重いものでした。家族5人が幸せに暮らしていたある日、主人公のウラのママは病いに倒れ、まもなく死んでしまいます。ウラと二人の兄と彫刻家の父の残された4人はその現実に打ちひしがれてしまいます。しかし、新しい出会いや、家族旅行を通してやがて、ママの不在を受け止め、乗り越え、「未来」を見つめるまでに立ち直っていく物語。


わたしが驚いたのは、パパが、ママの臨終に子ども達を立ち合せなかったこと。「お前達の思い出の中で、ママには生きていて欲しいんだよ。死んだママではなくて。」そう言ってパパは、子ども達にママの遺体を決して見せませんでした。日本では、死にゆく人を見送るために必ず、親しい人は臨終に立ち合います。「死に目にあう」というのは、最後の別れをするために大切な儀式だと思うのですが、そこはお国柄の違いなのでしょうか。(ちなみに、舞台はドイツ)


それから、ママが亡くなって、入れ替わるように物語の核となっていくのが、パパが製作中だったピエタ像です。大司教との親交や、パパがその製作に込めた想い、そして、完成した10トンもの巨大な像を運ぶ旅・・・。後半のピエタ像との関わり合いは、まるで詳細なドキュメンタリーを見ているようです。特に、トラックで数日かけて巨像を運ぶ場面は、以前テレビのニュースで見た、新幹線の車両を一般道を使って搬送した映像を思い出すほど、リアルでした。

  《 いま不幸なのは、いつかとてもしあわせだったせいなのだから。 》

ママの死を受け入れ、ついには、家族で未来を語り始めるラストシーン。あたたかい毛布でくるまれる様な、心地よい読後感にひたれる作品です。
関連記事 → 産経WEB 『ママは行ってしまった』

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コメント

ぽんさん、コメント下さってありがとうございます。
ぽんさんのように、ひとつの話題から枝葉を広げて行って下さるのって
ホントに嬉しいです。
ぽんさんのおかげで、好奇心のレーダーも、どんどん遠くへ伸びてってますョ。
これぞネットの醍醐味ってヤツですよネ。
ホントにありがとう~♪

『Red Violin』、良さそうですねえ。
たしかに、人の手で創られるものって、
創る人の「情」が乗り移っていくような気がします。
日本でいうと、能面とか、人形とかもありそうですよね。
そして創り手から生み出された「情」は、
創られた物を所有する人にまた乗り移っていくような、
ずっと遠い先まで繋がっていくのかもしれませんね。

その映画、レンタル屋さんにあるといいけれど、、、。

そうそう、
わたし、この本を読んで、初めて「ピエタ像」なるものが
いったいどういう像なのかを知ったのですよ。
今度、その類の彫像を見る機会があったら、
マリアの表情を、是非確かめてみたいと思ってます。

投稿: 志生野 | 2004年4月12日 (月) 09:44

このおはなし読んでいないのですが、「Red Violin」という映画を思い出しました。
http://www.cinemaitalia.jp/primipiatti/primo-rero.htm#violin
いくつかの時代を超え人の手をわたっていく
バイオリンの話ですが、
ものがたりの発端のエピソードで
出産をひかえた女の人がタロットで占って
もらうシーンがあり、
「あなたは形をかえて
遠い旅をします」というようなことを
いわれるのです。
その直後に
こどももろとも亡くなるのですが、
夫が端正こめて作った
バイオリンになって(に宿って?)
いろいろなことを経験し、成長し、
幾世紀も経て
もう何ものにも傷つけられない存在になると
いうような話なんです。
わたしが説明するとわけのわからない話でも
映画をみていると
すごくすんなりはいってきました。
このおはなしのピエタ像にも、人間は
はかないものだけれど 永遠のものに
つながりたい、という思いがあるような気が
しますし、あの映画の世界と通じるものを感じました。

投稿: ぽん | 2004年4月11日 (日) 18:22

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