« 『貝の火』 宮沢賢治 | トップページ | 『わたしの庭のバラの花』 »

2004年5月30日 (日)

『のっぽのサラ』

今月読んだもので、なかなか感想を書けなかったものをぼちぼちと・・・。
しかし、「本の感想」というのは、いざとなると難しいもんだなぁ。
よく、食べ歩きのレポーターが「美味しい!」の他に余計な形容をダラダラと喋ってるけれど、考えようによっちゃ、「本の感想」もそれに似てるのかも。「面白い」作品には「面白い」だけでいいんじゃないか、なんて思うこともある。
*** *** ***

のっぽのサラ
『のっぽのサラ』   パトリシア・マクラクラン 作
金原瑞人 訳   中村悦子 絵   徳間書店

アンナとケレイブという姉弟とお父さんの住む大草原のど真ん中の家に、ある日サラという女性がやってくる。彼女は、お父さんの「結婚相手、求む」という新聞広告を見て、一緒に暮らせそうか、試しにやってきたのだ。アンナもケレイブも大喜び。すぐに二人はサラのことが大好きになるのだが、果たして海の好きなサラがこの大草原に残ってお父さんと結婚してくれるのだろうか・・・。

読み始めたとたん、アンナとケレイブ姉弟のまだ見ぬサラへの思慕が一直線にサラに向かって溢れ出していく様に圧倒された。お母さんが亡くなったあとお父さんと3人だけで、広大な大草原で寄り添って生きてきた姉弟にとって、新しい家族になってくれるかもしれぬサラへの期待はあまりにも大きい。

読者もいつのまにか姉弟と一緒にサラの登場を心待ちにし、実際に現れたサラを日々知っていくうちに一段と彼女を好きになり、そしてこの大草原に残ってくれるように祈る。まさに読み手は姉弟と一心同体となる。

しかし、今のわたしならサラとも一心同体になれるのだ。彼女の揺れる気持ちは、海が単に恋しいわけではない。海に象徴される「これまで自分が歩んできた人生」を捨てなければならないことが悲しいのではないか。小中学生がこの作品を読んだとき、(早くサラが決心してくれればいいのに)と思うかもしれないが、ここでサラが揺れ惑うからこそ、大人が読んでも共感できるのだと思う。

ちょっとアーディゾーニを彷彿とさせる中村悦子さんの挿画も素晴らしい。

|

« 『貝の火』 宮沢賢治 | トップページ | 『わたしの庭のバラの花』 »

コメント

MAKIさん、コメントありがとう~。
さっそく「潮風のおくりもの」ってどんなの?って検索してみました。
http://www.hico.jp/sakuhinn/3sa/siokaze03.htm
すっごく面白そうだね!
喪失感を抱えた家族と、残された赤ちゃん・・・。
うーん、設定が絶妙だなぁ~。

今ね、『明日のまほうつかい』と『海の魔法使い』を借りてきてるので、
そっちを読んだら、さっそく借りに行ってきますね~。

そういえばMAKIさん、好きな作家として「マクラクラン」を挙げてたよね。
また、良さそうなのがあったら、教えて下さいね。

投稿: 志生野 | 2004年5月31日 (月) 05:37

マクラクランの本は「のっぽのサラ」「草原のサラ」もとても好きだけど、
もしもっと読んでみようと思ったら、ぜひ「潮風のおくりもの」をお勧めします~
私が大好きな本なんだけど、何度読んでも暖かい涙がこぼれる、ジ-ンとくるお話です。

投稿: MAKI | 2004年5月30日 (日) 21:11

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/6605/678346

この記事へのトラックバック一覧です: 『のっぽのサラ』:

« 『貝の火』 宮沢賢治 | トップページ | 『わたしの庭のバラの花』 »