« 2004年12月 | トップページ | 2005年3月 »

2005年2月25日 (金)

『雪の林』

雪の林やえがしなおこ 作  菅野由貴子 絵  ポプラ社
2月21日付けの朝日新聞朝刊で、松谷みよ子さんらが主宰する「びわの実ノート」という童話同人誌の記事が載っていたのだけれど、その記事の中で紹介されていた『雪の林』という作品を、ちょうど図書館で借りていたので読んでみた。
作者のやえがしなおこさんはわたしと同世代の方で、小学校6年生の時に宮沢賢治の作品と出会って作家を志すようになり、主婦業のかたわら創作を続けてきたそうだ。『雪の林』は全部で6篇の短編からなるもので、一篇一篇が、動物や植物と共に山野で生きる人々の控えめな優しさに溢れている。わたしが特に気に入ったのは「鬼のくれた赤い稲」と表題作の「雪の林」の2篇。

「鬼のくれた赤い稲」は題名からも解る様になんとなく「泣いた赤おに」のせつなさを彷彿とさせる物語。冷夏で米が不作となった村で、人々を救いたい一心で鬼のところに食物を分けて貰いに頼みに行く決心をしたカヨ。果たして彼女が出会った鬼とは・・・。
カヨがおそるおそる「おめ、鬼か。」と尋ねた時の鬼の返答に、思わず胸の奥がぎゅーっと締め付けられた。そうだよね、鬼自身はきっとそう返事するよね。この鬼の一言で一気にわたしはこの鬼のことが大好きになってしまった。

そして「雪の林」は、長沼のばあさんと呼ばれる沼の主にまさか姿形がそっくりな娘が4人いるとは知らずに、その一人に恋をしてしまった可哀相なカワセミの物語。
四季折々の自然の美しい色合いが、読みながらそれはもう浮かんでは消え浮かんでは消えと、頭の中に映像のように映し出されていく凄さ。作者のやえがしさんの筆力が最も如実に現れている作品だと思う。

実はわたしがこの本を図書館で借りたのは、表紙に惹かれてのことだった。藍色に冴え渡った冬の空をユキドリが「こくこう こくこう」とハミングしながら飛ぶその装画に、つい本に手を伸ばしていた。いわゆる「ジャケ買い」は、今回も当ったという訳だ。作中にはモノクロの挿画が随所に添えられていて、そちらも合わせて味わえるのが嬉しい。

巻末に、砂田弘さんが「賢治の世界を引き継ぐ」という解説を寄せられているが、わたしには宮沢賢治とはまた別に、鮮やかな色の妙手と言う意味合いで安房直子さんにも通じたものを感じた。もっと彼女の作品を読んでみたい。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2004年12月 | トップページ | 2005年3月 »