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2005年3月 3日 (木)

『霧のむこうのふしぎな町』

霧のむこうのふしぎな町柏葉幸子 作  竹川 功三郎 絵
小学校6年生のリナは、お父さんから勧められて銀山村というところで夏休みを過ごすことにする。ピエロの枝のついた傘を手に、リナは一人電車に揺られ、銀山村のある駅に降り立つ。ところが、駅から遠く離れたその村は「霧の谷の町」という別名を持つ風変わりなところだった。リナを迎えた下宿屋のピコットばあさんは皮肉屋で、「働かざるもの喰うべからず」というルールをリナに言いつけるのだった・・・。

『千と千尋の神隠し』の元になった作品らしいという好奇心で読み始めたのだけど、最初、リナがお父さんから銀山村で夏休みを過ごすことを勧められて、その村まで一人でなんとか辿り着いたところまでは、本当に物語の世界に引き込まれた。一人で駅に降り立った時の不安。道を尋ね尋ねようやくリヤカー付き耕運機に乗せてもらった時の安堵感。せっかく遠くまではるばるやって来たのにその村がないかもしれない残念な気持ち。いきなり不思議な町に放り込まれた驚き。そういった「普通の6年生の女の子」としてのリナの様々な思いが手に取るように伝わってきて、(この先いったいどうなっちゃうんだろう!?)と、大きく期待が膨らんだ。

ところが、いざ「霧の谷の村」の生活が始まると、リナに厳しく当るピコットばあさん(厳しいと言ってもせいぜい皮肉を言う程度なのだが)以外、リナに好意的な大人ばかりに囲まれ、毎日美味しい食事と美味しいおやつを食べ、仕事もそう大したものは与えられず、楽しいばかりの日々が過ぎていく。読みながらきっとこの先どこかで試練が待ち受けているのだろうと期待していたのに、とうとうそんな展開は無いままだった。正直言ってぬるい。

リナは、何の為にこの町にやって来て、どんなものを得て、どれだけ成長できたのか、物語からはちっとも伝わってこない。リナが来年またこの村に戻って来たがるのも、そりゃこんな竜宮城みたいなところなら無理はない。誰だって現実逃避したいに決まってる。

だから、『千と千尋の神隠し』のような成長物語を期待せずに、例えば6年生程度の女の子が読んで喜ぶような(途中、わがままな王子様に惚れられる、という場面もあるように)、少女小説として読めば良いのかも知れない。思いの他、なんとも辛口感想になってしまったけれど、最初の導入部分が面白かっただけに、後半の失速感が本当に残念でならない。

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