« 「ふしぎなバイオリン」 | トップページ | 「バレエをおどりたかった馬」 »

2005年5月13日 (金)

「おじいさんのハーモニカ」

おじいさんのハーモニカヘレン・V・グリフィス作  ジェイムズ・スティーブンソン絵  今村葦子 訳
ジョージア州の線路沿いの小さな家に、おじいさんは1人で住んでいました。おじいさんは、冬の間は半端仕事をしたり、汽車が行き来するのを眺めたりして過ごし、春が来ると畑仕事に勤しみます。ある夏のこと、おじいさんの孫娘がやってきて、ひと夏を共に過ごすことになりました。しかしおじいさんは、これまでのペースを崩すことなく、自分の生活の中に孫娘を受け入れてやります。同じように農作業をし、同じように木陰でお昼寝をし、同じように虫の鳴き声に耳を傾け、同じようにハーモニカを吹いたり歌をうたったりしました。そんな生活を孫娘はすっかり気に入るのでした。翌年の夏、再び、おじいさんのもとにやって来た孫娘は、小さな家とおじいさん本人の変貌に驚きます。おじいさんは、病気になっていたのです・・・。
ジェイムズ・スティーブンソンの線画、たまらなく好みなんです~。クエンティン・ブレイクや、サイモン・ジェームズといった、気負いが無く、勝手気ままに線が突っ走ってる絵 って見てて気持ちいいんですよね。線の上に申し訳程度に塗られた淡い水彩絵の具も、自己主張せずにそののびやかな「線」を生かしてくれています。要は 、わたしってこうした「あっさり系」が好きなのかも。(笑) 
で、物語に戻りますと、まず最初に「あれ?」と思うのが、何故女の子のお母さんは娘をたった1人でこのおじいさんの家に1ヶ月も預けることにしたのかということなんです。理由は具体的に書かれていませんが、普通1ヶ月も年端も行かない娘をおじいさんに預けるというのは母親としてそれ相当の理由があるはずです。もしかしてそのあたりのことが、孫娘の気持ちに微妙に関係しているかもしれません。
しかしおじいさんは詮索もせずに取り立てて子供向けに目新しいことをするでもなく、それまでの自分の生活のペースの中に孫娘を受け入れてやります。孫娘も母親やわが家を恋うことなく、おじいさんとの毎日を楽しんでいくんですよね。きっと孫娘はおじいさんとの日々が性に合ったのでしょう。
しかし、2人がジョージアでの生活をとても気に入ったことがきっちりと描かれているからこそ逆に、後半のおじいさんの老いに対して読み進む辛さをもたらします。人間のどうしても避けて通ることのできない「老い」。孫娘も、その「老い」に対して、おじいさんと一緒に向き合います。おじいさんを1人にしないで・・・。それは、自分もかつてジョージアで、おじいさんにそうして貰ったからからなのかもしれません。孫娘にはおじいさん、おじいさんには孫娘がいて本当に良かった。ラストの『でしゃばり小僧め」という2人の台詞が キーワードとなって、とても温かく心に響いてきます。

*画像は洋書版です。

|

« 「ふしぎなバイオリン」 | トップページ | 「バレエをおどりたかった馬」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/6605/4107680

この記事へのトラックバック一覧です: 「おじいさんのハーモニカ」:

« 「ふしぎなバイオリン」 | トップページ | 「バレエをおどりたかった馬」 »