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2005年5月13日 (金)

「バラライカねずみのトラブロフ」

バラライカねずみのトラブロフジョン・バーニンガム 作    瀬田貞二 訳
ねずみのトラブロフは、夜毎、酒場でジプシーの楽士たちが奏でる演奏に聴き惚れていました。あるひ、あんまりトラブロフが熱心に聴いているので、ねずみの仲間がバラライカを作ってくれました。バラライカとはギターの一種で、ロシアの民族楽器です。トラブロフは念願叶って手に入ったバラライカの練習に励みますが、なかなか上達できません。とうとう、ジプシーたちの旅に同行して、楽士たちからバラライカの手ほどきを受けようと決心します。ジプシーが旅立つ夜、家族に黙ったまま、トラブロフも修行の旅に出かけて行くのでした・・・。
バーニンガムさんの、ごく初期の作品です。
まるで毛筆で描かれたような、勢いと迫力のある太い輪郭。なぐりがきのような、荒々しい色の塗り方。『ガンピーさん』シリーズの繊細な絵とは正反対な、ロシアの荒涼とした土着の風合いを感じさせます。特に、赤色(朱色)をページの半分以上に塗りたくった夕日の場面。血が滲んでいるような夕焼けの空を背景に、旅を続けるジプシー達のシルエットが醸し出す寂寥感は、絵本の醍醐味をたっぷりと味わえるシーンです。
さて、主人公のトラブロフ。バラライカという楽器に目覚め、惚れこみ、こだわり、そしてそれを得とくするために旅立って行く様は、なんと清々しくも頼もしい「少年の自立」でしょうか。性差は関係無いとは思いながらも「これが男だ!」と拍手を送らずにはいられません。人はこうして大人になっていくのですよね。
ところで、トラブロフとはまた違った意味でとっても気に入ったのが、彼の妹です。おかあさんねずみが病気になったことを知らせるために、道なき道を、吹雪の中、1人でトラブロフを迎えに行く行動力をみると、トラブロフ以上の強い精神力を備えていると言っても過言ではありません。現に、2人が家路につくまでの旅は困難を極めます。妹は、これだけの道を1人でやって来たのですから、まさに「女は強し」です。その妹のおかげで、家族が幸せに暮らしていけることになるのですから、もしかしたら彼女は、この物語の影の主人公と言えるかもしれませんね。
 

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