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2005年5月13日 (金)

「すてきなよるに」

すてきなよるにヴォルフ・エァルブルッフ 作   上野陽子・訳
ある夜のこと、自分に自信の無い者たちが、偶然にも満月の明りに促されるように、橋の下で出会いました。ヒキガエルは、自らを嫌悪するほど醜いと思っていましたし、コウモリ・ドブネズミ・クモ・に到っては、自分を嫌われ者だと半ば開き直り、悪態をつく始末です。ところが、後からやって来たハイエナが、さんざんからかわれたあとで皆に向って言うのです。「カッコ悪いとか、きれいだとか、人がどう思おうがぜんぜん関係ない。大切なのは何をするかだ! 何かをするべきだよ!じぶんのために。そして、人のために!」そう言って、サクソホーンを吹き始めると、その見事な音色に、皆はこれまでからかっていたハイエナのことを、いつのまにか好きになっていました。そして、ドブネズミはウクレレを、クモは歌を、コウモリは口笛を吹いて、サクソホーンの合わせました。そうして、とうとうヒキガエルは、我慢できずに言うのです。「わたしはパンケーキが焼けるの!」と。 5匹は、音楽とパンケーキの店を始める計画を思いつきました!・・・。

満月の夜、橋の下、という舞台に、1人また1人と登場人物たちが集まってきて、台詞をまわしていく進行は まるで演劇を見ているような感覚のする絵本です。場面はずっと同じ橋の下で、台詞だけがどんどん絡み合って、登場人物たちの気持ちが変化していく様子は、さながら心理劇といったところでしょうか。自分に自信の無い者たちが、音楽をきっかけに繋がっていき、未来への希望を見出していく・・・。この『すてきなよるに』という題名がなんともピッタリくるじゃありませんか。
登場人物たちは、お世辞にも美しいとは言えませんが、黄土色や赤茶色の茶系の色鉛筆でシンプルに描かれてユーモアに溢れ、尚且つ、あくの強い存在感を示しています。
作者のヴォルフ・エァルブルッフはドイツの方ですが、かなりの日本通のようで、作者紹介を読むと、狼沼樹という邦名もお持ちのようです。作中で、ヒキガエルが襦袢を着て草履を履き、パンケーキの店には提灯がさがっているのもそのせいでしょう。その和洋折衷がまた、この作品の主題を暗に物語っているのかもしれません。

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