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2005年5月13日 (金)

「ベンのトランペット」

ベンのトランペットレイチェル・イザドラ 作・絵    谷川俊太郎 訳 
夜、ベンは非常階段に座って、ジグザグ・ジャズ・クラブから聴こえて来る音楽に耳をすませます。特にトランペットの音がお気に入りで、自分でも吹いているつもりになって熱中し、疲れ果てて暑苦しい夜などはその場で眠ってしまうほどです。学校の帰りも、ジャズクラブを覗いて、ミュージシャンが練習するのを見守ります。いつのまにか、日々の生活の中で、ベンはいつもトランペットを吹いているような気になっていました。そんなある日、ジグザグ・ジャズ・クラブのトランペッターが、ベンが吹いている気分になっている時に「いかすラッパじゃねえか」と声をかけてくれたのです! ベンはすっかりその気になってしまいます。ところが、ベンがトランペットを吹くジェスチュアをしている姿を見た他の子ども達が「ばっかじゃねぇか!」と、ベンのことを笑いものにしてしまいました。  口惜しさと悲しさでいっぱいのベンは、ジグザグジャズクラブの戸口に座り込んでしまいました。そんなベンに、トランペッターが近付いてきて・・・。
いやぁ~、もう驚きの絵本です。とにかくページをめくってみて下さい! 
こんなかっこいい絵本は見たことがありません。自分がジャズに疎いことが本当に残念です。もしわたしが、せめてルイ・アームストロングやマイルス・ディビスなんかの有名どころの演奏を聴いた事 があったなら、きっとページをめくるたびに素晴らしい音色も一緒に鳴り響いたことでしょう。
見開きからいきなり始まる折れ線グラフのようなギザギザの線。まるで雷鳴を表したような線。表紙を開いたとたんすでにモダンジャズの演奏が始まっているかのように、その線は続いていきます。そして物語が始まると、細部までまるでミクロの単位で描き込まれたかのような線と点。それが時には繊細に、時には大胆に、演奏さながら展開していきます。ああ、きっとジャズを絵にしたらこんな感じになるのかなぁ。 また人間の描き方、構図が実にかっこいい!! 何気ない仕草が、見事にスイングしています!
えーっと、絵の凄まじさに見とれてばかりじゃ勿体無いですね。ストーリーも実に素晴らしいのですから。 こどもが成長していく過程において、その途中で生まれる向上心や好奇心をいかに上手く掬い上げてやれるかどうかということが、大人の務めだということ。それをしみじみ感じます。また、こどもにとっても好きなことをとことん突詰めることの意義。これも考えさせてくれる物語です。
ああ、やっぱり、そんな小難しいことはこの際置いといて、とにかくこのかっこいい絵を見て欲しい!これは、ジャズと同じように「感じる」ことこそ大切な絵本だと思いますから。

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