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2005年6月12日 (日)

ぼくを探しに

ぼくを探しにシェル・シルヴァスタイン作   倉橋由美子 訳   講談社
THE MISSING PIECE (1976)

部分的に欠けた円の「ぼく」は、その欠けた部分を探しに旅に出ます。旅先で他のいろんな円や、カケラ達に出合いますが、なかなか自分の欠けた部分にちょうど当てはまるカケラに出会う事は出来ません。それどころか、欠けているせいで、転がるにもスピードが出ず、みみずとお喋りしたり、花の匂いを嗅いだり、カブトムシと遊んだり、道草もいっぱい。やっと出会った何個かのカケラとも、上手く行かなかったり、いろんな障害が待ち受けています。そしてとうとうある日、ついに自分にぴったりのカケラと出会ったのです! ところが・・・。

あまりにも有名な、この作品。きっと読まれた方も多いことでしょう。  
作者のシルヴァスタインは残念なことに1999年に他界されてしまいましたが、彼の遺した多くの作品たちは年齢・性別を超えて多くの人を惹き付けています。特に、若い男性にファンが多いのは、絵本界では特筆すべき事ではないでしょうか。全ページ、白の背景に、黒い線で単純に描かれただけの落書きのような絵。そのシンプルさが, 可愛い系が苦手な男性読者にも、受け入れられ易い要因なのかもしれません。

さて、この円が探す「カケラ」とはいったい何を暗示しているのでしょうか。訳者のあとがきによると、例えば理想の女性を追った男の話としても読んでも構わないのでは?ということも具体的な例として挙げられています。確かに、愛情の対象としても成立しうる物語です。
しかしわたしは、このカケラはきっと他者ではないと思うのです。これは、自分の内側にあるもの(あるべきもの)ではないか。だからこそ、体から離れたものはもう2度と元には戻らない。その、ある種の喪失感がカケラを追い求めてしまうように感じるのです。

わたしはこの絵本と高校生の頃に出会いました。あの頃は、自分を理解してくれる、自分を受け止めてくれる存在を追い求めて、カケラを探していました。つまり、自らの満たされない部分を埋め合わせてくれる相手を探していたのです。しかし、あるときふっと思ったのです。そんな幻想を探すのではなく、きっと他にもわたしと同じようにカケラを探している人がいるはず。カケラそのものを探すのではなく、カケラを探している人とめぐり会いたい!

この作品を読むと、非常にせつなくなります。誰しも、満たされない部分を抱えて、折り合いをつけて、人生という道をころがっているのだなって。でも、それはけっして『一人ぼっち』という意味とは違うのですよね・・・。



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