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2005年6月 1日 (水)

『おたまじゃくしのたまーら』

おたまじゃくしのたまーらマイケル・バナード 作   吉田新一 訳   竹山博 絵
絵本には、俳句や短歌のように、季節を味わう楽しみ方があります。その季節ならではの「旬」を織り込んだ絵本を読むと、自分達が今生きている現実の暮らしの中でも、ふと立ち止まって辺りを見回してみたくなります。例えばこの作品も、6月の今だからこそ読んでおきたい1冊なのです。

おたまじゃくしのたまーらは泳ぎが下手で群れから置いてきぼりにされます。優しいドジョウがたまーらの友達になってくれますが、やがてたまーらのからだに2本の足が生えてきて、「足のある生きものが嫌い」なドジョウは去って行ってしまいました。寂しく哀しいたまーらは新しい友達を探しますが、池にはゲンゴロウや水鳥などの危険もいっぱい。そんなある日、たまーらは1匹のカエルと出会うのでした・・・。

何が凄いって、とにかく絵が素晴らしいんです。まるで日本画のよう。掛け軸の定番に鯉や鮒が水辺で泳ぐ柄がありますが、雰囲気はそれに近いです。日本画の持つ清廉さ、繊細さ、簡素さを、この作品で存分に味わうことができるのです。カエルやドジョウ、ゲンゴロウなどの生き物は図鑑顔負けにリアルで、背景の草花や水辺は線や色も柔らかく幻想的ですらあります。この作品の魅力は8割がたこの美しい絵にあるとわたしは確信しています。(表紙画にこっそりリンクを張ってますのでご覧になって見て下さい)

さて肝心の物語は、わたし個人の感想から言わせて貰うなら、「ロマンス」こそ主題のように思われます。見た目がリアルなカエルなので、決して可愛い女の子には見えませんが、たまーらはからだの成長と共にその恋も実らせていきます。二本足が生え尻尾が無くなっていくたまーらの変化が、まるで、思春期の女の子が胸が膨らみ生理が始まっていくようにも読めるのです。やがてたまーらは1匹のとのさまカエルと出会いますが、そのカエルの台詞がまた良い!「しっぽが消えて、君がすっかり大人になったら、またこの水連の葉の上で会おう」と約束するんです。なんかもう、「ニクイよ、このー!」とひやかしてやりたくなるようなキザなことを言って、たまーらのハートを鷲掴み。いやぁ、参りました。(って、絵本読んで悶えてるワタシもどうかと思いますが) たまーらの尻尾はやがて消え、2匹は約束どおり、満月の夜に水連の葉の上で再会します。もちろん、生涯の伴侶となって。あぁ、ロマンティックだなぁ。

  *この作品は「こどものとも」の特製本です。1982年に「こどものとも」として出版されています。

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