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2005年10月12日 (水)

いすがにげた

いすがにげた森山 京 / 作   スズキコージ / 絵
この作品はポプラ社の「絵本おもちゃ箱」というシリーズの中の1冊なんですが、このシリーズのラインナップを見ると対象年齢はどうやら5~6歳前後ってところのようです。でも、この『いすがにげた』に限って言えば、子どもよりも大人の方が気に入るような気がします。いろんな経験を経た大人にこそ味わえる深みのある絵本。もちろん、動かないハズの椅子が野を越え山を越えして行く様はユーモラスで小さな子どもが読んで貰っても充分に楽しめる内容でもあります。

ある日おばあさんの家から1脚の椅子がなくなってしまいました。いつも軒下に置いている古い椅子です。「あんな古い椅子を持って逃げる人もいないだろうに」とおばあさんが不思議に思っていると、通りかかった猫が「あいつなら逃げてったよ」と教えてくれました。おばあさんはもうびっくりぎょうてん。椅子が自分で逃げるなんて! そこでおばあさんはしぶしぶ椅子を探し始めたのですが・・・。

森山京さんの創作文なのに、スズキコージさんがイラストを描いちゃうともうロシア民話にしか見えないところが凄いです。鍵鼻でギョロ目、腰も少々曲り気味のその容貌はまるで魔女か山姥。最初は逃げ出した椅子をいやいや探していたくせに、なかなか見つからないことに腹を立てヒートアップしていく様は、たとえ椅子じゃなくても逃げ出したくなるよなー、なんてね。しかし民話調の展開もここまで。物語のターニングポイントは、おばあさんと椅子が並んで寝そべって空を眺める場面で訪れます。このシーンはホントに素晴らしいです。大好き。
絵本にはよく「椅子」や「ソファ」が題材として扱われますが、あれはやっぱり、「自分の居場所」みたいなものを象徴してるんでしょうね。「居場所」というか、 《 いても良いんだよ 》 という存在の許諾というか。だからこそおばあさんは、走馬灯のように浮かんだこれまでの思い出に免じて椅子を開放してやろうと決心できたのだとワタシには思えました。自分の人生に納得がいっているからこその決別。
ちょっとネタバレ気味になってしまいましたが、ま、ラストは読んでから味わって貰うってことで。

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2005年10月 4日 (火)

終わらない夜

終わらない夜ロブ・ゴンサルヴェス/絵  セーラ・L・トムソン/文
金原瑞人/訳   ほるぷ出版

先にロブ・ゴンサルヴェスの描いたイラストを見て、刺激を受けたセーラ・L・トムソンが詩を添え作られた絵本。 つまり作家をもインスパイアしてしまうほどの圧倒的世界がこの絵の中にあるということです。きっとクリス・ヴァン・オールズバーグやデイヴィッド ウィーズナー系が好きな人なら気に入るんじゃないかな。まさに絵本でしか味わえない絵本の醍醐味がたっぷり詰まった作品です。

わたしが好きなページは「夜の飛行」「眠りにつく畑」「白い毛布」のあたり。
「夜の飛行」はうちの子どもたちにもダントツに人気がありました。キルティングのベッドカバーがいつの間にか畑に変わって、寝巻き姿の子どもはその畑の上空をふわりと飛ぶ・・・。 ( こんなことできたらなぁー。 ) という夢がそのまま絵になったような1枚。
それから「眠りにつく畑」はひまわりの擬人化が素晴らしい。向かって左端から3番目の目を伏せてる人物は、まるでクララのお婆様を彷彿とさせる品の良さ。服と同素材の手袋が効いてます。まるでビロードにようなしっとりした緑色が深く美しい。
最後に「白い毛布」。この絵本って「よくこんな空間を想像したなぁ」という絵が揃ってるんですが、中でもこの「白い毛布」は圧巻です。降り積もった雪のなんと温かそうなこと。世界中の雑音を全て飲み込んで創り上げた静けさの中で守られるようにして眠る子ども。いやもう、絵の説明しても仕方ないです。見て貰わねば始まらない。

若干物足りないとしたらそれは、絵があまりにも存在感があり過ぎて詩が少々押され気味なところ。詩は残念ながら「きれいな添え物」程度かなぁ。うーむ。

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