2004年7月 4日 (日)

『夏のかんむり』 片山令子

夏のかんむりお気に入りのサイトでこの詩集の紹介がされていて、衝動的に買ってしまったのだけど、片山令子さんの使われる言葉が大好きなので、この詩集もわたしにとっては大満足だった。

湿度をたっぷりと含んだ夏の空気と、ノスタルジックな風合い。大人になることの痛みと、悲しみと、諦めと、そして希望。捨てるんじゃなくて「この身に持ち続ける」ことを選んだ少女の澄んだ瞳。片山さんは、きっといくつになっても「オバサン」にはなり得ないように思う。

全部で26編の詩のうち、特に気に入ったのは「くるみの木」「わたしを生んだ土地には今も」「ぐみ」の3つ。どれも植物の瑞々しさにあふれ、季節と共に移ろうその姿に自らを重ねて、わずかな悲しみの実のなる詩。そして、詩と同等に素敵なのが、自身による「あとがき」の短い文章。

手の中に入りやすい軽い本にしよう、と考えたのは、わたしがよく本を持ち歩いて読むからだった。好きな詩集のふちは、みなフェルトのようになっている。詩は地図だと思う。詩のことばそのものは、ただ文字がまばらにならんでいるだけのもの。地図がそこへ行くひとにしか意味がないのと同じだ。でもそこへ行ってみようというひとがあらわれると、地図は急に息を吹き込まれ、きれいに曲がった道や、聖らかな切り通しや、秘められた沼のありかを教えてくれる。


装幀は片山健さん。すべての詩に片山健さんの絵を添えて是非絵本にしてもらいたいものだ。もちろんその時は、線画ではなく、筆の先に滴り落ちるほどの水を含ませた水彩画が良い。


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